家族信託®(民事信託)とは

平成29年2月28日にNHKで放送された「クローズアップ現代+」は、「さらば 遺産“争族”トラブル ~家族で解決!最新対策~」とのタイトルで、相続トラブルが多発している現状と、その解決手段の一つとして家族信託®が紹介されました。

http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3942/1.html

家族信託®セミナーのご案内

令和元年10月5日(土) 14:00~16:00

認知症になっても家族が困らない「家族信託®」について

 

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◎「信託」の仕組みとは?

信託とは、委託者(財産の所有者)が、受託者(財産管理を行う人)に、委託者の財産を移転し、受託者は、その財産を委託者との約束で決めた一定の目的に従って管理処分をし、その財産から生じた利益は、受益者に配当するという仕組みです。

具体的には、Aの不動産を、Bが預かって運用又は処分をし、それによって得た現金をCに渡すというイメージです。

◎受託者は誰でもなれるの?

これは、信託業法上、信託の引き受けを「営業」として行う場合には、免許が必要となり、信託銀行や信託会社は、当然免許を持っています。

しかし、平成19年の信託法の改正により、「利益を得る目的で反復継続」して信託を受託しなければ、受託者に信託業の免許は不要となりました。これにより可能となったのが「家族信託®」です。

具体的には、父親の家を、長男に信託し、長男は父親の自宅を管理しながら、父親をその自宅に住まわせるということができます。これが「信託を活用した新しい相続」として注目されているのです。

◎信託した財産は誰のもの?

信託した財産の所有者は受託者になります。(所有権が移転される。)

ただし、信託財産にかかる経済的価値は受益者のものです。税務上も、原則として受託者でなく、受益者が信託財産を有しているとみなします。(「相続税」「贈与税」も、原則として受益者の移転が有った場合に課せられます。

◎「家族信託®」によって出来ることは?

①老後の財産管理

例えば、父親が元気な間に、財産の名義を長男に移しておきたいが、その財産を自分の利益のために使って欲しい場合に、父親(委託者・受益者)、長男(受託者)にすることで老後の資産管理を安心して長男に任せることが出来ます。

これによるメリットは、

  1. 万が一父親の意思能力が衰えた場合にも、財産管理に必要な手続きをその都度成年後見人の同意を取る必要が無く、信託の定めに従って、財産管理が継続されます。
  2. 贈与税をかけず、長男に財産管理の権利を移転することができます。
  3. 事情に合わせて、契約をメンテナンスしていくことも可能です。
  4. 高齢者が詐欺の被害者になる危険を防止することができます。
  5. 信託契約の締結と同時に効力が発生するので、財産管理を始めるまでの空白期間が少なく、迅速な対応が可能です。

②遺言代用

遺言を行う場合、遺言の厳格な方式に従わなくてはなりません。信託は、委託者と受託者との契約で行うことができます。信託に信託財産の帰属を定めることにより、遺言と同じ効果を発揮させることができます。また、信託契約は、契約の締結と同時に効力を発揮させることができます。遺言は、死後の財産の帰属についてしか定められないので、より広範に利用することができます。また、遺言はいつでも取り消すことが可能ですが、信託であれば契約の性質上、解除等の理由が必要になるので、一部の相続人による遺言内容の操作等は出来なくなります。

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③資産承継の順番指定

通常の相続の場合、生前贈与や遺言を利用してある程度の承継者の指定は出来ますが、いったん贈与・遺贈した財産の次の承継者を指定することはできません。しかし、家族信託を利用することにより、事実上において、相続の順番を決めることができ、例えば、「長男」が亡くなった後の受益者を第二受益者として「次男」にすることもできます。また、まだ生まれていない子(孫やひ孫等)を第三受益者として指定することも可能です。
つまり、最初の受益者が死亡した場合には第二受益者が、第二受益者が死亡した場合には第三受益者が…と順次受益権を引き継ぎ、最終的に信託終了時に残った財産があれば、その受取人(残余財産の帰属先)を指定しておくことで、委託者が単独で資産承継の道筋を決定することが可能になります。
ただし、信託期間には限りがあり、「最初の信託開始から30年を経過後に新たな受益権を取得した受益者が死亡した時点」で信託は終了します。

④同族会社の事業承継

例えば、相続人が長男・次男 二人の場合で、同族会社の支配権を長男のみに与え、円滑な事業承継をしたい場合があります。この場合、次の方法が考えられます。

  1. 次男に同族会社株式以外の不動産・金銭等の財産を与える。
    ⇒兄弟間のバランスがとれなくなる可能性がある。
  2. 議決権なき株式を次男に発行する。
    ⇒株式の内容の変更には全株主の同意が必要となり、面倒である。
  3. 家族信託®を利用する。
    この場合、家族信託®を利用して、受託者を長男、受益権を長男・次男に各々与えることで、長男は信託の目的に従って株主の権利を行使することができます。
    但し、次男は、一般に配当が微々たるものであったり、株主としての権利行使もできず、内心面白くないかもしれませんので、将来的には次男から受益権を買い取る努力をする必要があるかもしれません。

⑤福祉型信託

Ⅰ.親も老いますし、子よりも先に亡くなるのが通常です。その子が障がい者であった場合、親御さんは「自分の死後、子がどうなるのか」を常に不安に感じています。
その対策として、「負担付遺贈」という手法がありました。親御さんは、障がいを持つ子以外の者に財産を多めに残す代わりに、障がいを持つ子の世話(負担付)をするよう遺言をしていました。
しかし、多めに財産を受け取った者(受贈者)が、障がいを持つ子の世話をせずにトラブルになったり、この受贈者が破産した場合、子の生活支援のお金が無くなってしまうなど、非常にリスクの多い手法でした。また、法的な監督者もなかったため、実効性に乏しいという状況が続いていました。

Ⅱ.親の世帯と子の世帯が離れて暮らすことが多くなった昨今、高齢の夫婦が抱える問題として、旦那さんが亡くなった後に、残された奥さんが既に認知症を抱えていたり、身体が衰え介護が必要な状態になっていた場合に財産管理・身上監護をどうするのかといった問題があります。

上記Ⅰ、Ⅱのような問題に対しては、後見制度を活用していくことで、解決が図られています。障がいを持つ子や認知症の奥さんに後見人が付くことで、子や奥さんの財産管理・身上監護を支援していくことができます。
ただし、後見制度を活用した場合、子や奥さんの保護・支援に重きを置いているため、財産管理も硬直的な取扱いにならざるを得ず、逆に制度の利用を敬遠されるケースも見られます。
そこで、民事信託の登場となります。これにより以下のようなことが実現できます。
1.旦那さんや親御さんが委託者となり、奥さんや障がいを持つ子を受益者とします。受託者には親族等を選び、財産管理を任せます。受託者は、信託で定められた範囲の中でしか財産の管理・処分はできません。受益者である奥さんや子に不利益となる行為をさせない仕組みを作ることができます。
2.1とは逆のことを言っているように見えますが、信託で定めれば、その範囲内で、奥さんや子のための財産保全に配慮しつつ、積極的な財産の運用処分を行っていくこともできます。
3.後継ぎ遺贈型の信託のスキームを組むことで、奥さんや子の生活保障から一歩進んで、財産を未来の世代に承継させていくこともできます。
4.受託者となった者が破産しても、信託には財産隔離機能があるため、信託財産は保全され、奥さんや子の生活は守られます。
5.信託監督人などを選任することにより、受託者が間違いを起こさないよう監督していくことが可能です。
6.成年後見制度と併用すれば、奥さんや子の保護・支援を強固にすることができると同時に、信託による柔軟な財産管理・処分・運用を行っていくことができます。

Ⅲ.交通事故被害者救済のための民事信託
交通事故等により高次脳機能障がいが残った場合、本人保護のため、成年後見人が就任します。また、交通事故賠償金は、高額な上に、一括支払い方式によることが多く、後見人が賠償金の管理を持て余すケースも見られます(親族後見人では、その傾向が強くなります)。このような場合に、賠償金等の管理をする受託者を別に立て、身上監護を後見人に任せ、財産管理を受託者に任せるという役割分担が可能となります。労災事故などにおいても、同じスキームが適用できます。
福祉型信託では、成年後見制度との組み合わせにより、本人を支援していく体制を構築していくことが望ましいと言えるでしょう。

以上のように、「家族信託®」を利用すると、今までの相続対策にはない、多くのメリットがありますので、お気軽にご相談ください。 

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